ラドヤード・キプリング (Rudyard Kipling, 1865-1936)
1865 年12月30日にインドのボンベイ (Bombay) で生まれたイングランドの小説家、詩人。教育はイングランド本国で受け、1882年から89年 までインドでジャーナリストとして活動、同時に現地の題材から詩や小説を書きインドの新聞に掲載し始めた。インド在住のイギリス人と現地の人々の生活を描 いた短編集 Plain Tales from the Hills (1888) や唯一の長編 Kim (1901) などを易しい文体で書き、一般民衆の人気を集めた。また讃美歌と伝承バラッドの影響の濃い彼の作品も人気となりベストセラー作家となり、「非公式の桂冠詩人」とも言われた。1907年にはノーベル文学賞を受賞した。代表的な詩集は Barrack-Room Ballads and Other Verses (1892) であり、勇気や忠誠心、戦場での苦難などイギリス兵の心情を的確に表現した作品として讃えられている。
彼 は13世紀に実在した予言者で詩人のアースルドゥーンのトマス (Thomas of Erceldoune) をもとにした伝承バラッド “Thomas Rhymer” からモチーフと人物を借りて “The Last Ryme of True Thomas” を書いた。“Thomas Rymer” については幾人もの詩人が詩を書いているが、キプリングのトマスは人間の驕りを諌め、世俗の権威を否定する堂々たる予言者像を表現している。 (M. I.)