ジョン・キーツ (John Keats, 1795-1821)
1795 年にロンドンで貸馬車屋を経営する父親の下に生まれたロマン派詩人。幼い頃に両親と死別し、親交の深かった貴族出身のシェリー (P. B. Shelley) やバイロン (George Gordon Byron) とは違い、大学教育を受けることはできなかった。しかし、Aeneid の翻訳やスペンサー (Edmund Spenser) の作品など多くの本に夢中になり、1817年には最初の詩集を発表した。その4年後1821年、25歳という若さで結核のために生涯を閉じた。
1818年にはギリシア神話をもとにした長編物語詩 Endymion を 発表したが、当時の批評家には酷評された。同じ年にはHyperion も書いたが未完。翌年の1819年は「驚異の年」と言われ、“Ode to a Nightingale” や “To Autumn” など6編のオードやバラッド、物語詩など多くの傑作を書いており、これらの作品は2冊目の詩集 Lamia, Isabella, The Eve of St Agnes, and Other Poems (1820) に収められた。
2冊目の詩集に収められたバラッド “La Belle Dame sans Merci” は伝承バラッド “Thomas Rymer” や中世ロマンス Tomas off Ersseldoune (?1410) などから得たモチーフである。描写にはスペンサーなど様々な詩人の影響が見られる。物語は伝承バラッドによく見られる唐突な語り手の質問で 始まっているが、伝承バラッドとは違い、キーツの騎士には非常に苦悩する活発な精神世界と、たださ迷う不活発な肉体世界という分離が見られる。 (M. I.)
論文 1 |
鎌田明子「ジョン・キーツにおけるトマス伝説の受容」 |
論文 2 | 藪下卓郎「ロマン派詩人にとってのバラッド— キーツの‘La Belle Dame sans Merci’ を中心に — |
論文 3 | 鎌田明子「“The Three Ravens” と “La Belle Dame sans Merci”―鳥をめぐるバラッドの世界―」 |
原詩(英詩) |
訳詩 |
1. La Belle Dame sans Merci | 1. つれなき麗しの妖精 |
2. Song (“The stranger lighted from his steed”) | 2. ソング |
3. Meg Merrilies | 3. メグ・メリリーズ |
4. Robin Hood | 4. ロビン・フッド |
5. Ah! ken ye what I met the day | 5. ああ あの日丘の向こうで出会ったものが |